院長から勉強会からの情熱の発信
先日、11月30日(土)眼科とは直接関係はありませんでしたが、目を通じて様々な方々の健康と触れあう機会が多いため、「生活習慣病のカンファレンス」に参加してきました。
ご講演では、名古屋大学医学部附属病院の消化器内科の伊藤先生、旭川医科大学内分泌講座の野本教授がご講演されました。アルコールを飲み過ぎると、肝臓が悪くなるよ、肝硬変になるよ、はとても有名すぎるお話です。今回はそのお話ではなく、日本人の肝機能障害は、アルコールは関係しないMASLD(Metabolic Dysfunction Associated Steatotic Liver Disease(MASLD):
代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)が多いそうです。
つまり、脂肪肝が原因の肝障害です。
しかも!日本人は、痩せているのに、脂肪肝になる確率が高いそうで、、。
益々私が日頃から口ずっぱく患者様達に申し上げている、「筋肉の重要性」に他ならなかったのです。
肝臓が悪くなりすぎると、繊維化(ヘチマだわしのような状態)が起き、見かけ上は肝障害がなくなってしまう(これは、悪くなりすぎると、脂肪すら蓄えられなくなる)ため、早期の段階で、専門医療機関(特に消化器の先生)にご紹介するべき、ということを啓発されておられました。
私自身は眼科医として働かせていただいておりますが、しかし、採血検査をしますし、全身検索を行ったときに、肝機能障害に当たることがあります。今までご指摘されたことがない方は、アルコールも飲まないのに何で??と消化器内科に御受診いただき、腹部エコー等の精査する機会を得ていただくことができます。しかしながら、健診でずっと少し高いんですよね~と引っかかり慣れ(?)されておられる方は、にこやかに「わかりました~♪」とおっしゃっていただくのですが、多分御受診いただけないんだろうな~と思っておりました。
今回このような勉強会参加の機会をいただき、早めの対処で肝臓が元気に、そして、アルコール飲酒に関与しない肝炎にもならないように、生活習慣を変えることで予防ができると学ばせていただきました。もう少ししっかりと啓発できるかな、この知識があればできたのに、と思いました。
肝臓の治療については、現在、B型肝炎、C型肝炎にインターフェロンしか治療法がなかった時代と違って、治療ができる病気にもなっています。まさに医療は日進月歩。世の中と一緒で、自分が昔こう言われたから、ということは通じないんだな、(20年前などSNSや、iphoneの存在など誰が予想できたでしょう?)と人ごとでなく感じました。同時に、医師として、昔の知識で、大丈夫でしょう。というのは、本当に危険だな、と改めて今後の私の人生の学びになりました。
今回の消化器の勉強会、また、循環器のお話、以前出席させていただきました泌尿器科の勉強会で排尿障害updateのお話(フレイルと絡めて)など、少しでも理解できるのは、20代の時、本当に、ご迷惑をかけながらでしたが、お世話になりました名古屋記念病院での研修生活があったからだな、と実感しております。
スーパーローテートという全科研修がスタートした2年目の年でしたが、救急外来の研修に加え、各科の先生方、研修医をまとめ上げていた総合内科の先生が大変厳しく、臨床の考え方、各科の基本的な思考と治療と病気へのアプローチの仕方等々をかなりしっかりと教えていただいたおかげだと本当に実感しております。病院では、医師看護師のみでなく薬剤師の先生、地域連携の方々、放射線技師の方々、採血、病理検査等をしている検査部の方々にも本当にいろいろとご指導いただきました。正直、研修は私ができる研修医では全く無かったため、本当にご迷惑を掛けたと思います。しかし、家に帰る時間、寝ることもなかなかできなかった(時代ですね)研修時代、そして大抵どの時間でも研修医部屋には仲間がいた、先輩医師が夜遅くまで働いていた職場があったからこそ、私の医師としての知識の礎となっている、ことを心より実感して止みません。
他科の先生のお話は自科の勉強会以上に、学びも多く、uptodateになるため、本当に勉強になります。勉強会の末席でお邪魔かもしれませんが、今後も医師としての初心を思い出すべく、また、慢心しないように、学んでいく、学ばせていただく事を続けたいと思います。
ありがたいことに、今年はコロナが明けた年であり、当院の8年目の開業年でした。まだまだ世の中の大先輩方、また、病院で第一線で働いておられる先生方と比較すると、まだまだ頑張らねばなりません。頑張らせていただく、いただけることに感謝し、そして、私を頼っていただける患者様からいただいている学びにも感謝しながら、今回の勉強会を拝聴させていただきました。
人生死ぬまで成長。私自身、成長を望み挑み続けても、素晴らしい人達の何歳かにくらいにしかならないと思っています。
私の想いをここに刻み、今後も精進していきたいと思います。そして、私の人生が少しでも皆様のお役に立てます様に。今後ともよろしくお願い申し上げます。
トピックス>>>2024.9月
NAFLD/NASHからMASLD/MASHに名称変更
2023年6月に欧州肝臓学会(EASL)、米国肝臓病学会(AASLD)、ラテンアメリカ肝疾患研究協会(ALEH)が合同で名称変更を発表したことを受け、日本肝臓学会、日本消化器病学会もこの変更に賛同することを発表していました。その後、両学会のNAFLD/NASH 診療ガイドライン作成委員会が合同で検討を続けてきた結果、2024年8月日本語の新たな病名と分類が正式に決定し発表されました。
まず、NAFLDやNASHを含め、さらに上位に位置する、肝臓の一連の変化のベースとなる状態が「脂肪性肝疾患(SLD)」として定義されました。これは従来、「脂肪肝(fatty liver)」と呼んでいた状態とほぼ同じです。
このSLDの中で、過剰飲酒がなく代謝異常が生じている場合を「代謝異常関連脂肪性肝疾患(MASLD、マッスルディー)」(従来のNFALD)となりました。代謝異常が生じている場合とは、過体重や肥満、2型糖尿病がある場合のほかに、体重が基準範囲以下であったとしても、腹部肥満、中性脂肪高値/善玉コレステロール(HDL-C)低値、血圧高値、インスリン抵抗性、全身性炎症などが複数あてはまる場合も該当します。そして、このMASLDに該当して、かつ肝炎が生じている場合は、「代謝異常関連脂肪肝炎( MASH、マッシュ」(従来のNASH)となりました。