医療を通して、人の人生を見るということ

― 上社眼科 院長として、この10年を振り返って ―

上社眼科を開院して10年。

この10年間、さまざまな年代、さまざまな背景を持つ患者様と出会い、医師として多くのことを学ばせていただきました。

人生の大先輩である患者様からは、病気のことだけではなく、長い人生を歩んできたからこその考え方や生き方を教えていただくことがあります。

一方で、子どもたちと関わるときには、医師として、そして少し先を歩く大人として、目の病気や視力のことを通して、その子が自分らしく成長していけるように、何かを伝えられたらと思っています。

最近、私は医師という仕事は、単に「病気を治す仕事」ではなく、
医療を通して、人と人として、その人の人生に関わらせていただく仕事なのではないか
と、強く感じるようになりました。

それは、これまで出会ってきた皆様のおかげです。

私が尊敬する方から、以前こんな言葉を聞きました。

「人生は、配られたカードで勝負するしかない。」

人は皆、それぞれ違うカードを配られて生きています。

家庭環境も、才能も、身体も、性格も、育った場所も、経験も違います。

だからこそ、誰かのカードと自分のカードを比べても、あまり意味はありません。

大切なのは、
自分に配られたカードをどう使うか。

今、自分が持っているものを見つめ、その中でどう努力し、どう人生をつくっていくか。

私は、それがとても大切なのだと思っています。

特に子どもたちは、まだ世界が小さいからこそ、

「どうしてあの子はできるのに、自分はできないんだろう」
「あの子の家はいいな」
「どうしてうちはこうなんだろう」

と、人と自分を比べてしまうことがあります。

でも、本当は世界はもっと広く、もっと多様です。

自分が今見ている世界が、世界のすべてではありません。

だからこそ、子どもたちには、少し先を歩く大人が、いろいろな世界を見せてあげることが大切なのだと思います。

日本だけではなく、異なる文化や価値観、さまざまな生き方を知ることで、

「人はみんな違っていい」
「自分は自分でいい」

という感覚を持てるようになるのではないでしょうか。

眼科の診療をしていると、目そのものには大きな異常がないにもかかわらず、視力が十分に出なかったり、視野に異常が見られたりするお子さんに出会うことがあります。

心因性の視力障害や視野障害です。

数か月、時には長い期間にわたって症状が続くこともあります。

もちろん、一人ひとり原因も背景も違います。

だからこそ、目だけを見るのではなく、
その子がどんな環境で、どんな気持ちで、どんな世界を見ているのか。

そこまで考えることも、医療の大切な役割なのではないかと思うようになりました。

そして「自己肯定感」という言葉があります。

私は、自己肯定感とは、
「自分をすごいと思うこと」だけではないと思っています。

弱いところも、得意ではないところも含めて、

「自分は自分でいい」
「今の自分を、まず自分自身が認めてあげる」

そこから始まるものなのではないでしょうか。

私自身、子どもたちを育てる中で、息子たちから教えてもらったことがたくさんあります。

子どもを育てているつもりが、実は自分自身も子どもたちに育ててもらっている。

そんなことを感じることもあります。

上社眼科を開院して10年。

これからも、目を診ることはもちろんですが、その人の背景にある人生にも目を向けられる医師でありたいと思っています。

そして私自身も、もっと世界を広げたい。

さまざまな場所へ行き、さまざまな人と出会い、異なる価値観に触れ、自分自身の視野を広げていきたいと思っています。

その経験を、これから出会う子どもたちや患者様にも、少しずつ伝えていけたらと思います。

人生には、それぞれ違うカードが配られています。

だから、人と比べるのではなく、
自分に配られたカードを大切にして、どう生きるか。

そのことを、医療を通して、そして一人の人間として、これからも皆様と一緒に考えていけたらと思います。

10年間、上社眼科に関わってくださったすべての皆様に、心より感謝申し上げます。

これからも、どうぞよろしくお願いいたします。

上社眼科
院長 伊藤 理恵

 

上社眼科